白眼野 りゅー

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 失恋をした。僕の好きな人には、好きな人がいたんだって。

「好きだよーっ!」

 海に向かって、叫ぶ。君と君の好きな人にも、この声が届いてしまえ。そして、全部壊してしまえ。


【君の背中にどうか届いて……】


「……何してるんだろ」

 せめて山で叫んでいれば、山びこが返ってきたりして、それなりに手応えがあったのかもしれない。海は、僕の叫びを吸い込んでしまったみたいに静かで、当然君に僕の声は届かないし、君からの返事だってあるはずもない。

「大好きーっ!」

 僕の想いは届かなくてもいい、と思ったから、君と距離を取った。今更届いてほしいだなんて、あまりに虫がよすぎる。

「愛してるよーーー!!」

 それでも、届いて……! と、思う。君を愛している人は、確かにここにいるんだよ。だから、君は大丈夫だよ。

 君の好きな人にこっぴどく振られたからって、屋上から飛び降りなくてもよかったんだよ。

「何があっても、僕は君の味方だよ! 無価値なんかじゃないよ! 目を覚ましていいんだよ……!」

 君から離れて、友人ですらなくなった僕では、病室にも入れない。それでも、海沿いのあの部屋まで届くように叫ぶよ。

 君に選ばれなかった僕は君の正面じゃなくて、後ろから言葉をかけてあげればよかったんだ。こんなことになる前に。後悔もガソリンみたいに燃やして、また叫ぶ。

7/10/2025, 6:37:38 AM