わをん

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『今年の抱負』

その場のノリで、今年の抱負を絵馬にしたためようぜという話になった。玉砂利を踏みしめて社務所にぞろぞろと向かい、今年の干支である龍が描かれた絵馬と個人情報保護シールを渡されて時代だねなどと3人で盛り上がったあと、油性ペンを片手に白紙の絵馬と対峙しつづけている。
「ほうふ、ってなに?」
「願い事じゃないんだ?」
「ググった!えーと、なんか平たく言うと、目標?」
「「「目標なぁ〜」」」
自分で言うのもなんだが目標なく生きている。サラリーマンとして働き、たまの休みに余暇を過ごし、盆と正月には地元へ帰り、恒例行事として3人で集まればしょうもない話をだべって終わる。声を揃えたことでそれぞれ似たような生き方なのだなとわかってしまった。3人共にため息をついてしまう。
「でもまぁあれだな。健康一番てやつじゃね」
「おっ、ハードル下げるね〜」
「まぁでも確かにそうだよな」
健康であれば生きてはいける。金を稼げるし遊びにも行ける。1日生きてひと月生きて、それを繰り返すうちに1年を走り切れるし、またこいつらと会うこともできる。同じようなタイミングでそれぞれのペンは動き出し、ガサガサした書き心地の絵馬に書き記していく。
「おめえ何書いたんだよ、見せろよ」
「やめろ!令和だぞ!」
「はい、俺もう貼った~」
おそらくなのだが、シールの下に書かれていることはみな同じなのだろう。

1/3/2024, 5:02:03 AM