John Doe(短編小説)

Open App

ユーサネイジア・デバイス


同意書にサインする
これは私の意思だから
全てを諦めた
全てを捨て去ったの
大丈夫、これで終わりなのだから

棺桶の扉がゆっくり閉まる
中から開けることはできない
私は気持ちを鎮める
何も怖がることはない
何も恐れることはない

外の世界の音が完全に消えた
聞こえてくるのは自分の鼓動
だけどパニックになる必要はない
私は眠りに落ちていく
深い眠りへと落ちていく

液体窒素の幻影
酸素濃度低下の脳内アラーム
遠退く意識と目まぐるしい七色の光
平穏な世界と聳え立つ雄大な楼閣
そして静寂
やって来る暗闇
あるのは暗闇だけ
心地よい暗黒の世界

私は

やっと自由になれた
だけど、ここは私の望んだ世界じゃない
「もう後戻りできない」
やっと苦しみから解放された
だけど、ここは私の夢見た場所じゃない
「もう元の世界に帰れない」
やっと自由を手に入れた
だけど、ここには何もない
「帰りたい、こんなはずじゃなかった」
「帰りたい、こんなはずじゃなかった」
「帰りたい、こんなはずじゃなかった」

帰りたい。ここから、帰りたい。
こんなことになるくらいなら、私は、もう少し。

1/22/2024, 12:43:48 PM