茶園

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空想遊話 『謎の列車』
※凄く長いです。

 眠たいのに、なぜか外に出ていた。
 意味もなく、目的もなく。
 なぜか、駅の方へ歩こうとしていた。
 特に意識している訳でもなく。

 あっという間に駅に着いた。ぼーっとしながら歩くと、時間も距離も短く感じる。
 この真夜中、終電は終わっているから来ても意味ないと思っていたのだが、
 なぜか電車が止まっていた。
 しかも、見覚えのない電車。淡く蛍光のように光る紫一色の列車。これは何鉄なのだろう。
 行き先を見てみたが、何も書かれていない。
 なのに車内は電気が点いていて、乗り場に面するドアは全部開いている。
 明らかに怪しいが、取り敢えず乗った。

 中には、乗客が二人いた。サラリーマンの男と、若い金髪の女性。ドアが閉まる音がした。

 電車の進むスピードは異常に遅かった。自転車くらいかもしれない。所々徒歩レベルのところもあった。

 他の乗客から遠い端の席に座って寝ていたが、サラリーマンの男の声で目が覚めた。
 「あんた…ここ乗るの初めてかい?」
 男は目の前に立っていた。いきなりだったので思わず肩がすくんだ。
 「え…そ、そうですが…」
 「そうか…てことはあんたも選ばれたんだな…古代の賢者に。いや、試されてるといった方が正しいかな?」
 「??」全く理解不能だ。若干お酒の匂いがする。きっと酔っているのだ、この人は。
 「いや、気にしなくていいよ、直に分かる」
 この人は過去に何回か乗ったことがあるのか?
 きこうとしたが、男は颯爽と元の席に戻って行った。
 金髪の女性はニヤニヤしてこちらを見ている。怖くなってきた。

 電車は長旅であった。長く感じただけかもしれないが。どこに向かっているのか、どこまで行くのか分からない中、ようやくアナウンスが鳴り響いた。
 《ショウヨウ~ショウヨウです》
 勿論、聞いたことがない地名。路線図にもそんな駅はない。ドアはパニックになりそうな自分をよそに、開いた。
 他乗客二人は電車を降りていった。足が弾んでいるようにも見えた。
 電車は発車しない。ドアは開いたまま。降りるのは怖いが、他にどうすればいいか分からず、降りた。

 しかし、外は意外と明るかった。辺り一面森だが、木の幹や地面のそこかしこに何か光っているものがあった。
 近くで見ると、それは…宝石のように価値のあるものだった。触れた途端、眠気は一気に吹き飛んだ。そして、頭の中に何かが降りてくる感覚を覚えた。正しく、それは自分の追い求めていたアイデアだった。
 歩いても歩いても、光はどんどん見つかり、新しい発見が次々と起こり、自分の世界は広がる一方であった。こんな経験は初めてである。
 同じ駅で降りた二人は奥でひっそりとその様子を見てはお互いの目を合わせては互いにVサインをした。

 その不思議な電車の旅を終えてからは、自分のライフスタイルは不思議と良くなり、仕事も捗るようになった。
 あれはいい旅だったんだなと今は思えるのだが、夢かどうかも良く分からず、あのサラリーマンの男が言った言葉はどういう意味なのかはまだ分からずであった。

2/23/2023, 3:31:49 PM