「お前のお気に入りの子来てるよ」
クラスの奴にそう言われて
「はぁ?」
と返すと、入り口には顔を真っ赤にしている部活の後輩が来ていた。
そう、俺の好きな子、“お気に入りの子”だ。
彼女の赤面に釣られるように俺も顔が熱くなっていく。
周りの男共がニマニマと腹の立つ顔でこっちを見てくるのに耐えかねて彼女の腕を引いて階段の踊り場にいく。
後ろで茶化すような「ヒューヒュー!!」という野次が飛んでいたが無視した。
踊り場までくると彼女と向き合って謝罪する。
「ごめん、揶揄われて嫌だったよね。本当ごめん」
申し訳なさで少し下を向きながら謝ると、彼女は手と顔をブンブン振りながら「大丈夫です!」と答えた。
その仕草が可愛くて心臓がキュッと鳴ったのを感じながらも平静を装う。
「えっと…それで、俺に用事?」
そう聞くと彼女は「あっ!」と言ってポケットからメモ用紙を取り出した。
「これ、顧問からです!先輩に渡しとけって言われて!」
なるほど。おつかいで来てくれていたのか。
というか顧問もわざわざこんな事せずに俺に直接言いにくれば良いものを。
「わざわざありがとう。用事はこれで終わり?」
「はい!」
元気よく答える彼女に笑みを漏らしながら
「じゃあ、また部活で」
と別れようとして、もう一度振り返り彼女を呼び止める。
「あの、さっきの“お気に入り”ってやつなんだけど。何だか物みたいな言い方で嫌だし俺はそんな事思ってないからね。でも、君のこと気になってはいるので、良かったら意識してもらえると、嬉しい…デス…。それじゃ」
恥ずかしくて赤面+敬語+尻窄みになりながら逃げるようにその場を去ると、後ろの方で「はい」という返事が聞こえた。
2/17/2024, 2:03:38 PM