ゆじび

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「雨音に包まれて」


「雨」
冷たくて、冷たくて。
僕の心を想いを全て凍らせるにはちょうどいい
温度で。
苦しい時の事も嬉しい時の事も、
全てを忘れさせてくれる。
もう僕は十分この雨に色んなものを奪われた。
だから...彼女の事は奪わないで。
いや、奪わないで欲しかった。


「雨」
暖かくて、優しくて。
私が置いていったあの人を慰めるのには
ちょうどいい柔らかさで。
あの人に私との思い出も、私の言葉も声も全て忘れて
新しい一歩を踏み出さしてあげて。
あの人はもう十分苦しんでくれたから。
私のことを想って涙を流してくれたから。
だからどうかあの人の記憶から私を奪って。



さよならは、誰かが言わない限り訪れなくて
誰かが言ったらすぐに訪れてしまうほど近くて
遠くて。
不思議なもの。
あの日雨が降っていなかったら?
僕が家に泊めていたら?
本当に少しだけでも話していたら?
僕が彼女を家まで送って行っていたら?
後悔。なんてしても意味がない事ぐらい少し考えたら分かるのに。
どれだけ考えても、考えると考えるほど
自分が嫌いになってちゃう。

あの日、君と遊び...デートに行って帰ってまた
明日って笑って別れて。
寂しかったけど困らせないために引き止めずに
見送った。
その日の次の日。
一度だけ声を聴いた。
電話越しに聞こえた彼女に彼氏と電話しているのか
茶化した声。
彼女の母さんの声。
消えてしまうくらいかすれた痛々しい声。
強くてどっしりとした父さんの声。
そんな声で彼女が天に旅立ったと聴いたとき。
信じられなくて。嘘だと本気で思っているのに
なぜか静かに。たくさんの涙が止まらなくなった。
滝って言葉が似合わないくらい静かな涙。
でも暖かい涙のはずなのに。
真冬みたいに冷たい涙だった。




お葬式。
体を焼いて。
骨を詰めて。
涙を枯らして。
声をあげて泣いて。
雨が降って。
僕を濡らして消えていく。
この雨が本当の雨かどうか。なにもわからない。
でも一つだけ言えることは、僕はこの雨に救われたって事ぐらい。
僕の涙を隠してくれて。
僕に笑っいて欲しいって言ってくれた彼女から涙を隠してくれてありがと。

この雨ほ優しくて暖かくて。
まるで君の胸のなかにいるみたい。
冷たいはずの雨が君みたいだっ想ったのは
君に対して失礼になっちゃうのかな?
だけど今は雨だとしても昔みたいに
君に抱き締めていて欲しいんだ。




「雨音に包まれて」



6/12/2025, 10:13:20 AM