4月1日。エイプリルフール。
画面の上の世の中じゃ、ちょっとしたお祭り。
午前中だけ嘘を言っても冗談として捉えられる、合法的なジョークの祭典。というよりは自分なりの嘘を作っては見せ合う日だ。
でも俺にとっては大事な大事な誕生日だった。
なんとなく言いづらい誕生日。
学校なんかじゃ春休みだから祝ってくれるわけでもなければ、新しい友達に誕生日を伝えれば少し気まずくなる。
「ごめんね、もうおわってたんだね。」
何度言われたことか。
謝ることは無いはずで笑顔で流せるたわいも無いことなんだけど、心に引っかかってしまう。
しかも4月1日というのは忙しい日なのだ。
両親が教師をしているから、新学期の準備で忙しい。
なんなら春休みに宿題がないのは先生が忙しいからと言われているように、この時期の2人には余裕が無い。
教師の子とは否応にも世間体が良いか反抗的になるか2択になる。
自分よりも生徒のことを考えている親のことなど好きになれるものでは無い。
だから、この日はいつも孤独に感じてしまう。
もちろん祝ってくれる人がいないわけではないし両親も忙しいながらもケーキを用意してはくれるが、なんとなく肩身が狭かったりする。
別のことで楽しくしているなか祝ってくれる様子であったり、忙しい雰囲気を醸し出しながらも祝っている様子が、
どことなく嘘にしかみえないのだ。
エイプリルフールだからね。
だから僕も嘘をつく。
「ありがとう。いつも感謝してるよ。今年もよろしくね。」
『エイプリルフール』
4/1/2023, 11:13:14 AM