ㅤ鈴の鳴るような凛とした音に私は頭を起こした。慌てて窓外を見れば、最寄り駅まであと二駅だ。
ㅤ鈴のようだと思ったのは、ドア横に立つ乗客のキーホルダーが、リュックと袖仕切の間で揺れてはぶつかっていたのだった。銀色の猫だった。
ㅤドアが開き、リュックを背負った人が降りていく。冷たさを増した風が、ふわりと車内を浸す。ただとてつもなく、淋しい夢を見ていた。
ㅤ隣でゲームに興じる若者が、肘を私にゴリゴリ押し付けてくる。淋しさの底で泣く私の幻影が、私からぐんぐん遠ざかる。
ㅤ姿勢を正す振りで肘を押しやり、零れた涎をそっと拭った。
『パラレルワールド』
9/25/2025, 11:30:56 AM