無音

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【195,お題:スマイル】

犬を拾ったんだ。

薄汚れててボロボロで、今にも死んでしまいそうで放っておけなかったんだ
抱き上げようと手を出したら、そいつ俺のことを噛んだよ。全然痛くなかったけど血は出た

家に連れて帰って初めて気付いたのが、コイツは犬じゃなかったってこと
まあ拾ったのが魔法の森付近だったから、薄々気付いてたけど
コイツは狼だ、それに多分結構上位の魔獣だろう

身体を洗ってやっても灰色が落ちなかったのは、コイツの毛色が元々灰色だからだ
何があってあんな人里近くに居たのかは分からないが、ひとまず保護することにした
まだ詳しい種類は分からないけど、人に変化出来るタイプならいろいろと便利だろう

「う"う"ぅ"ぅ"ぅ"~~」

「やっぱ昨日の今日じゃ無理か」

これからは不幸な目に合わないでほしいのと、笑って生きてほしいことから「スマイル」と名付けたが
"彼"はなかなか偏屈で頑固な性格だった、彼、というのは
人に変化出来る魔獣だったことから、ペットとしてではなく1人の人間として扱おう、という意思からきている

もともと野生で生きる種族だからだろう
彼はなかなかに野性的で、家を空けて戻ると核爆弾でも落ちたのか、と思うほどに家が滅茶苦茶に荒らされている

「そうしろ、と言うわけではないが、もう少し規模を縮められないか?」

「.........」

この奇妙な生活はいつまで続くのだろう
彼が野生に戻ろうという意思があるのならすぐにでも戻してやりたいとこだが
生憎彼の傷はまだ治癒しきってない、かなり時間が経ってる筈だが異様に治りが遅いのだ

未来が決めることをうじうじ悩んでもしょうがないが、部屋を散らかすのは勘弁してほしい
割れて散乱した花瓶を片付けながら、俺はふと思うのであった。

2/8/2024, 1:10:00 PM