友情
――君はさ、恋人と友達どっちを優先する?
酔っ払いの特段意味の無い会話の中で、急に真剣な目を向けられた。
相手は友達でも恋人でもない、たまに来るカウンターバーで、たまたま隣に座った初対面の女性。年上だろうか。身なりはとても綺麗なのに、乱暴にアルコールを摂取する様子はどこか寂しげな雰囲気が漂っていた。
――友達はそう簡単に離れないけど、恋人はその時の熱量が大事だと思って恋人を優先してた。でも、それは間違いだった。私は結局どちらも失うことになったわ。
自分にも古くからの友人が何人かいるが、そういえばもう何年も連絡を取っていない。心から友達、と言える人が本当にいるのだろうか。
――君、さっきから考えてばかりで一言も喋らない。実は友達いないんじゃないの?まだ若いのに可哀想ね、仕方ないからお姉さんがお友達になってあげるわ。
そう言って、隣に座る女性はひらひらとスマホを揺らし、連絡先交換を促した。友情というものは、いつ生まれるのか、大人になると不思議なもので、自分の思うタイミングではないことが多々あるようだ。
7/24/2023, 2:58:49 PM