Open App

「何でハート型ってこの形なんだろうね」
「んー?あー……説は色々っぽいが聞くか?」
「いらなーい」
ぐるりぐるりと塗り潰されていく胸部、鉛筆は離さないままに。
「ねー、心って胸と頭とどっちにあると思う?」
「胸なら心臓で、頭なら思考だな」
「そーいうんじゃなくてさー」
「……実体が無いのに何処とも」
「そーいうことでもないんだよー」
ぐるりぐるり、真っ黒に塗り潰されていく人形。
指先に咲いていく華は手遊びのようで。
「『君の心』って何処にあると思うのって話」
「……そういわれても」
熱く柔い血肉もない身体を、見上げる瞳は何処か必死な様に見えて。
「……そういうあんたは、何処にあるんだ」
「此処にあるよ」
投げられた鉛筆、黒ずんだ指先は顔を示した様に見えて、しかし違うと首を振られた。
「『此処』。足の先から頭の天辺まで、腹の内から指の先まで。『僕』って存在の全部に満ちてる、と思ってるよ」
だからね、と訴える。握られた腕に、うっすらと黒い手形が擦れる。
「此処に居る君こそが、君の心の証明だと。
 ……僕に、まだ信じさせていて」

<My Heart>

3/28/2024, 10:09:15 AM