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時間って、振り返ってみると本当に短い。

赤ん坊のとき、それはそれはヤンチャで、小麦粉をぶちまけたり、食べ物を床にボトボト落としたり。何度もイライラして病んでしまいそうになったけど、それでも可愛さが勝ってなんとかなっていた。

幼稚園のとき、入園して一ヶ月くらいは、ずっと自分から離れるのが怖くて、先生にとっても迷惑をかけてしまった。でも、沢山友達を作って、みんなとそれなりに仲良くできていたので安心した。

小学校に入ったとき、ランドセルの色で大喧嘩になった。チューリップのような濃いピンク色にしたいと騒いでいたが、近所のショッピングモールには赤しか売っていなかった。勉強嫌いではあったが、テストで100点を取って、自慢げに見せていたのをよく覚えている。

中学生に入ると、急に筍みたいに背を伸ばした。
運動部に入ってから、忙しくてほとんど話さなくなっていた気がする。志望校に受かるために勉強する後ろ姿をドア越しに見ていた。

高校生になると、なんだか急に大人っぽくなった。
メイクを沢山練習して、見違えるほど垢抜けた姿をみて、昔のことを思い出した。


 病室で、母はそう語った。
私は社会人になり、母は末期の病気でもう長くない状態だった。だからなのか、毎日私のアルバムをずっと読み返していた。
未来が見えないから、過去を振り返っているのだろうか

真っ白な病室の中に置かれた私のアルバムは、クレヨンやマーカーでカラフルに彩られていたから、やけに目立っていた。次はもう会えないかもしれないという気持ちで焦りを感じていた私とは裏腹に、母はもう諦めたような、そんな顔でいた。

時間が短いって、母自身もそう言っていたのに、刹那ほどしか生きていない人生に後悔がないのだから、母は本当に幸せに生きていけたのだろう。


時間が短いっていうのは、私だって同じだ。
私も母のように、残され時間が刹那ほどだったとしても、後悔のないように生きたい。
 桜が散る墓に、アルバムに負けないくらい鮮やかな花束を飾りながら、私は考えた。

4/28/2024, 12:28:21 PM