「な、なんだ、これ。」
大雨が降る森の急斜面で滑り落ち、死を覚悟をしたのも束の間私は古い木造建築の倉庫のようなものの屋根に寝そべっていた。
自分の傷を確認して大事でない事を確認してから起き上がってゆっくりと倉庫から降りると大量の枯葉が道を作っていた。まだ息が切れて動悸が止まらない。
私が今生きているのは奇跡そのものだ。
安堵していたが、不意に、ここはどこだと思い始めて不安に駆られる。
重症でないとはいえこの状態で遭難は危険だ。
慌てて周りを見渡すと倉庫の入り口から死角になっているところに古い立て看板が見てた。
「この先落石注意」
私の不安感はさらに増す。
さらに周りを見渡すとまた小さな木の看板が地面に刺さっていた。2000と書いてある。
ここもハイキングコースなんだと分かり私は安堵の溜め息をついた。
2000と書いていない看板の裏側がハイキングコースの進むべき道だ。つまり、2000と書いてある方角が下山に繋がる道である。
そう思いながら看板を確認しようと再度見ると、近くに枯葉が盛り上がっている部分があった。特別気になった訳ではないが私は安堵の気持ちから軽い気持ちで枯葉を足で払いのけた。
単に枯葉ばかりの山でなく下には何かあるようだ。黒い布のような....
枯葉が盛り上がってる部分はぱっと見150センチの横長だ。また一気に恐怖が押し寄せる。これは死体では?
急に足で払いのけるのが怖くなり、見たくないと思うようになった。
「別にいいよな。」
私は後づさりしてその場を後にしようとした。
すると、ビックリ仰天。落ち葉の盛り上がりがバッ!っと起き上がったのだ。
私は悲鳴をあげながら逃げた。
下山しようとするが先ほどまで降っていた雨のせいで地面が悪く、何度も転びかけた。はぁ、はぁと山の空気の薄さと一気に走ったせいで息切れして動けないと思ったとき、声が聞こえてきた。
「待って!待ってよ!!」
その声が凄まじく早く近づいてきていることに気づいた時には背筋に冷たいものが走り、冷や汗が止まらなかった。
しかし、その声に悪意が感じられず、幼い声に聞こえたので私は立ち止まった。
もし、怪我人なら大変だ。こちら側が一方的に驚いて逃げれば失礼だ。
妙に冷静になるもやはり、その姿を見た時は鳥肌がたった。
それの目は正気が全く感じられず、正に死んだ青魚の目だ。そして青白い顔、そして何より、頭がかち割れているのだ。前方の頭の三分の一ほどがない。頭の一部があるはずのところは欠けていて、赤黒く変色し、白いウジ虫が目立つ。
確実に死んでいる!!幽霊だ!
私が再び逃げ出そうとした時、その幽霊はいった。
「怖がらないでくれよ。確かに俺は死んでる。でも、いい幽霊なんだよ〜!お願いだ、頼む。霊感あるやつが来る可能性ってめっちゃ低いからさぁ!」
霊感がある?私は幽霊なんて見たこともなければ信じてもいなかった。
「腰が抜けて動けなさそう?ならちょっと説明だけでもさせてよ。俺は言わば呪縛霊だ。そして幽霊歴が長い。
なんと45年だ。体は見ての通り少年だが歴だけは自信がある。しかし、45年もこうやってこの山を見ているとウンザリするんだよね。だって人に話しかけられないし綺麗な花を摘むこともできないし、腹も減らない、夜も眠れない暇のひとことだ。」
「は、はぁ。」
私は夢でも見ているんだろうか。冷静に考えてこれが現実なはずない。
「そんでね、成仏したり誰かの背後霊になったりするには、霊感あるやつに叶えてもらうしかないの。例えば浮遊霊だったらこの土地にいる幽霊達全員で協力して上に上がるしかない訳よ。運良くどこかの浮遊霊が俺たちの誰かをタッチしてくれれば浮遊霊になれる。」
「でもそれってすごい労力使うし、下には熟年の幽霊が勤めるしかないの。何故なら存在感が増すから。この世にいるとどんどん存在が濃くなって集中すれば落ち葉に触れることだってできる。だから、しっかりとした土台を作るには、ベテランじゃないとダメなの。でも最近の幽霊は不真面目なヤツばっかでさぁ。俺の体が少年だからって舐めて浮遊霊になれてもタッチしてくれないの。そして幽霊歴がドンドン長くなっていくって訳。」
「だっ、、大問題ですね...」
「うんうん、そうでしょ?浮遊霊になるのは若者ばかりで協力した浮遊霊は報われないって、酷い世の中よね。そんなことが続くと、ベテランもただじゃ協力しなくなってくるのよ。結局は破却してここの山には幽霊がウヨウヨしてる。でも見えて聞こえるのは俺だけでしょ?説明は後だからさ、浮遊霊じゃなくて背後霊だと今の状況じゃ楽なんだよ。君に憑けばいいから。君に憑くには君の許可がいる。幽霊の権限でなにかしてあげてもいい。君の背後霊になってもいいかな?背後霊になった後は簡単!地上の浮遊霊にタッチしてもらって浮遊霊になって俺の意思があれば成仏できる」
「はぁ。」
私は妙に冷静にこの幽霊の言うことが頭に入っていっていた。
「憑いていいよね?守護霊になってあげてもいいよ。」
私が口篭っていると、幽霊はもーっ、と頬を膨れさせて速く速く、とせかした。幽霊だから全く可愛くない。
「いいですよ...ただし、私の古い友人と会わせて下さい。」
「古い友人?いいだろう。君みたいな三十代くらいの男性の友人なんてどうせ高校時代か大学時代の友人だろう。」
私は何も言わずに頷いた。
「背後霊なってもいいですよ。絶対合わせて下さいね?」
「マッジで!?おけ、じゃあ呪文唱えるから待ってね。あ、涙は出さないで。ないと思うけど。」
「〒7548jtjtmtwpaj」
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なんて言った?
そう思った瞬間どこからともなく風がやってきだと思ったら、幽霊の姿は見えなくなっていた。
「私の幻覚....?」
私が振り返ると先ほどの落ち葉の盛り上がりがあった。
その瞬間またあの恐怖が襲ってきた。夢じゃなかったのか。
そう思いながらもさっきの幽霊を起こすために今度は手で落ち葉を払いのけた。すると、そこにいたのは頭が片割れた幽霊でない、私の友人の姿があった。
10年前、行方不明になっていた古い友が見るも無惨な死体となって私の前に現れたのだった。
「タッチ!!よっしゃ!」
と言う声がどこからともなく聞こえてきた気がした。
11/23/2024, 3:40:57 PM