眠れないほど
ティロリロリ! ティロリロリ!
“どこにいるの?〇〇さんの家が崩れたんだって。ウチも避難するよ。”
母からのLINE のメッセージを見て、焦る気持ちをグッと抑えた。バス車内はスマホの警告音が度々鳴っていた。気象情報の確認や連絡をとるため、スマホを手に時を過ごす。
一人、二人と乗客が減り、私ともう一人の乗客を残したところで、運転手は降車扉を開け、乗ってきた男性と話している。
「この先の道路が冠水して、通行ができんけぇ、A町に迂回して車庫へ向かえぇ。気ぃつけぇよ」
バス会社の人がわざわざ車で知らせに来てくれたのだ。運転手は残る乗客の下車するバス停を確認し、無事にバス停まで送り届けてくれた。
雨と土のにおいが交じる。家に向う道は泥が流れ込み、滑らないように慎重に歩いた。避難先で家族と過ごす一夜は、まだ見えぬ不安、祈りで眠れなかった。
自宅は無事か、流れた家の人は無事かと。
翌朝一番に自宅へ向かった。自宅は幸いにも無事だったが、両サイドの大きな通りは土砂で埋まっていた。
眠れないほど怖い一夜、本当に長く感じた。生きていれば、働ける、食べていけるのに。今の日常を失いたくないと思った。
世界には人間同士が戦って、巻沿いになって住む場所も家族をも失う人がいるというのに。眠れないほど不安な人々が一日も早く終わるように、祈ることしかできない。
12/5/2022, 12:25:27 PM