NoName

Open App

「おはようございます、観測者様」
空気圧が外界と揃うのに少しかかる。その間も外部の声を拾うようになっている。微妙な電流での目覚めは23回目となる。
ガラス戸が開く。
「……ちょべりぐ」
「……チョベリグー?」
22回目ではギリギリ通じた“すっげぇいい感じ的な? てかマジで2000年生きてんのゲキヤバなんですけど!”語録は起床早々彼らに大きな謎を残してしまったらしい。
切り替えよう。
「経済と技術、環境について知りたい。代わりに私はいつも通り君達に、紀元から今までの歴史を話す」
「ああ、はい。経済、完全に破綻。銀行券に価値のある時代は終わりました」
アメリカが解体された時点で予想はできたが、めざましいことだ。
「技術、22世紀の技術栄光時代のプログラムを解析していますが、進展は見られません」
22世紀の天才どもの脳みそを取っておけばと惜しむ人間はその脳みそを使う技術すら失われることに気づかない。何故ならそういう人間は22世紀の人間であり無自覚の天才だからだ。
「環境、見ての通り、氷河水宇宙放出の弊害として砂漠化は深刻です」
アメリカが沈みかけてから100年も経ったか。水晶の砂が素足の足の間で踏みつけへのレジスタンスを起こす。
「箱に詰められていた銀行券の破棄を提案いたします」
「二枚ずつ残してよ。銀行券は文化的価値の集大成なんだから」

お金より大事なものは文化と規則。
だって紙切れに価値がないと気付けば、みんな金の延べ棒を買うだろう?
【お金より大事なもの】2024/03/08
日付が変わる!みかん!!

3/8/2024, 2:58:19 PM