私の頭上を何かが引っ張っている感覚がある。そう気が付いて目が覚めた。ベッドの上で寝ながら、真っ暗な自室を見渡す。仕切り代わりの引き戸が目に付いた。引き戸の向こうから声はもう聞こえない。この落ち着いた気配は、夜明けが醸し出す雰囲気だ。
ああようやく静かになれると私は安堵した。
花粉症で鼻を詰まらせる年老いた豚の悲鳴は聞こえない。痰ばかり吠え散らす生き損ないの犬の遠吠えも聞こえない。壁から呟く鶏の鳴き声も聞こえない。それらの胃袋を掴み取んで畜生にしたキルケのクソみたいな脱糞音もしない。
なんて心地の良い静かな夜明けだ。この時間がずっと続けばいいのに。ずっと続けてほしい、続く、何を、あれ、何でこの人たちと家族でいるんだっけ。どうして私はここにいるんだ。いつまでいるつもりだ。引き戸の向こうってなに。私今年に入って家族と会話したっけ。いや、していない。気付いてはいけないことに気が付いた? 嫌な気分だ。不快だ、これ以上言葉にできない。頭の隅に何かがいるうごめいている泣き叫んでいる発狂しているのか私はこんなきたない場所にいるのに何で狂っていないんだあああああああああ
あ
も
う
ね
む
い
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(250206 静かな夜明け)
2/6/2025, 12:36:30 PM