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小さい頃、私は満たされていたのかそれとも逆に遠慮があったのか、欲しいものというのが特になかった。
だから誕生日プレゼントに何が欲しいかと聞かれても回答に迷ったし、好きなキャラクターを何か1つ持っておく事が私自身の個性になるだろうと思って、特に好きでもない『くまのプーさん』を好きだということにして、プーさんを好きな子どもを演じていた。

誕生日に貰ったのは、立派なプーさんのぬいぐるみと目覚まし時計。
ぬいぐるみはベッドサイドにいつも置いていた。目覚まし時計は壊れるまで使った。

大学生になって実家を離れ、ぬいぐるみの存在はすっかり忘れていた。
月日が経って、結婚して子どもが生まれ、実家に帰ると、懐かしいおもちゃがたくさん並べられていた。ぬいぐるみも大量にあり、その中に私の『くまのプーさん』のぬいぐるみも座っていた。20年以上経っているとは思えないほど状態がよかった。
3人姉妹だったので、親はどれが誰のぬいぐるみでどんなエピソードでそれを手に入れたんだったか、さっぱり忘れていた。「懐かしい」と私が言うと、「そうだったっけ」と照れくさそうに笑った。

3人の子どものうちの1人が、プーさんのぬいぐるみを気に入って、どうしても連れて帰ると言った。
大事に抱きしめて帰り、ままごとでお世話をして、毎日一緒に眠っている。
不思議な縁があるものだな。

大好きな人からもらったプレゼント。
どうしても捨てられないもの。
今は、大好きな人にあげることができた。
捨てられない性分も、悪くないと思った。

8/18/2024, 1:12:38 AM