喜村

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 蒸された空気で窓ガラスは結露していた。
今日も雨かとうんざりする。
 素手で雑にその水滴を拭いてみる。
見慣れたいつものうちの庭。
……ではなかった。
「なに……!?」
 思わず濡れることも構わず、服の袖でゴシゴシと窓を拭いてみる。
 違う、うちの庭がそこにはなかった。
 窓越しに見えるものは、炎。
 雨のはずなのに、火の手が見えた。
 火災? 近所で? いや、そういう炎ではない。
 炎だけではなかったのだ、窓からみえたものは。
--ドラゴンがいたのだ。
「……うそ」



【窓越しに見えるものは】

7/1/2023, 12:55:04 PM