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友情

 「友情って何?」
そう警察に聞かれても、答えれなかった。
それは俺が、友情という甘い言葉に浸っていただけだった。いや、勘違いをしていただけなのかもしれない。
 俺は昔からずっと、友なんていなかった。だけど大学生になってから、俺に頻繁に話しかけて来る奴がいた。そいつは、なんか変な壺を紹介してきたり、変なビジネスに勧誘してきたり、とにかく変な奴だった。だけど、話しかけてくれることが嬉しくてその変な誘いにのっていた。だっていっつも誘いの最後に「俺らは友達だろ?俺とお前の間には友情があんだよ。友情ってのが。」と。そんなこと言われたら、嬉しくて誘いにのってしまう。たけどそいつの誘いにのっていると気づかない間にヒートアップしていた。そう、気づかない間に。俺はそいつに溺れていたから。ある日、「今日の夜空いてる?空いてたらさ、〇〇工場の倉庫に行こうぜ!面白いの用意してっから。な?俺らは友達だろ?俺とお前の間には友情があんだよ。友情ってのが。」俺はその誘いにのり、夜〇〇工場の倉庫に行った。真っ暗で何もわからなかった。だけど、そいつが懐中電灯で合図してくれた。その光を頼りに、俺は急いだ。俺とそいつの距離が近くなると、懐中電灯を消し俺に何かを持たせてきた。俺が「なんだこれ?」そう聞けば、「おもちゃのナイフだよ。今日は、暗闇の中でサバゲーな。俺があちこちに仕掛けを置いといたからそれに攻撃っ!すればいいんだよ。わかったか?」俺が「あぁ」と言えば「じゃあ、5秒後にスタートな!」そいつの声が遠のいていった。5秒数えてゲームが始まれば俺はゆっくり歩き、コツッと何が足に当たったらナイフをまっすぐに出し、グサッと音がなるまでナイフを振った。感触はなんとも言えない感じで、リアルなサバゲーだなぁそう思った。出口に近くなればなるほど的の数も増え、たくさんナイフを使った。ゲームの終わりが来て出口に出れば、そいつが待っていて
「やるじゃん友。」そう言ってくれると思った。だけど現実は違った。出口から出たら目の前にはパトカーと警察が何人もいた。俺が唖然としていると、警察が「さっき、通報があってね。〇〇工場の倉庫で変な奴がナイフを振り回して、たくさんの女性を殺してるってね。」そう言いながら、俺の手に手錠をかけ署へと連れて行かれた。
署では、今までのことを全部話した。すると警察は俺に
「貴方の…その、友情ってなんなの?だって、結果的に貴方はそのそいつ?…に騙されて連続殺人鬼になっちゃってるわけだから。」
「"友情ってなんなの?"」この質問に俺は答えられなかった。なんでだろう。今まで俺に"友"という存在がいなかったせいで、友情が何なのか。何が正解なのかわからなかった。どこまでが、友情ですむ話なのか。俺はどんどんわかんなくなっていった。ずっとグルグルと頭の中で、「友情ってなんなの?…友情ってなんなの?…」と回っていた。俺は頭が真っ白になった。だけど、頑張って答えた。あんまり、なんて言ったのか覚えてない。だけど、意識が遠のく前、目の前にいた警察は目を大きく開け、顔がグチャグチャに引き攣っていた。後日、あのときなんて言っていたか、警察の方に聞くと
「友情っていうのは…相手と仲良くなって、…殺すこと。…相手を笑顔で苦しまないように一気に優しく殺すことだぁぁ。」って言っていたと。
あぁ、そっか。そう思えば、俺の顔は笑顔で溢れて止まらなかった。

7/24/2024, 12:15:28 PM