「……わ、」
先程まで会話するには困らなかったのに、お互い相槌だけになってしまって、次の言葉を繋げることが出来なかった。
最初に止めてしまったのは自分の方だと理解している。
けれど。
短くも数分の瞬き。
「ああ、東京じゃこんなには見えないですか?」
釣られるようにして同じように見上げた彼には見慣れた光景なのだろう。
夕方まで滞在はあっても、夏の日もすっかり沈みきった夜中なんてこちらでは初めてだった。
きらきらきらきら。
瞬くという表現が適切なのだと、目を凝らさなくても無数に散らばる星々があまりにも眩い。
「冬は空気が澄むので、もっと綺麗ですよ」
顔を合わせなくてもふんわり微笑んでいるのが分かるほど声に甘さが含まれていて。
思わず足を止めて眺める『星空』。
帰るのが惜しくなるほど、それでも早く歩みを進めたいのは空にいる月が今、隣にあるからかもしれない。
7/5/2024, 3:26:34 PM