本日のテーマ『終点』
これまでいろいろありながらも、なんとか生き延びてきた俺の道程に、ついに人生の終点が訪れた。
具体的に言うとエアコンが壊れてしまった。
リモコンを冷房に設定して温度を20℃に下げてもエアコンの送風口からぬるい風しか出てこないのだ。
まごうことなき死活問題である。なにしろ昨今は温暖化の悪化により気温35℃超えが当たり前の時代に突入している。さらに悪いことにモノで溢れた俺のアパートの一室は風の逃げ場が無く、室温は37℃に迫る勢いであった。
はっきりいって、夜でも35℃近い部屋で眠るのは拷問に近い……
俺はアパートの管理会社に修理の依頼の電話をした。
「あ、もしもし、すみません……〇〇の〇〇号室の梶ですが…エアコンが壊れてるみたいで修理をお願いしたいんですが……」
管理会社の方から業者の人に確認を取ってもらったところ、折り返しで電話があった。
それによると今はエアコン関係の修理やら取付けやらの依頼が込み合っていて、俺のところの修理は最短でも8月の半ば頃になるそうだ。
俺は深く絶望し、同時に激昂した。
「ふっざけんなよ!」
俺はスマホを壁に投げつけ大声で怒鳴りたてた。怒鳴りたてようとしたが……俺もいい歳をした大人なので、あくまで心の声にとどめ「あ、そうですか……じゃあ、それでよろしくお願いします……」と言って電話を切った。
さて、そういうわけで8月半ばまでエアコン無しで過ごさなければならなくなってしまったわけで。
そうなって一番困るのは、とにかく眠れないことだ。
いつもの生活パターンだと深夜0時~2時までに床につく俺であるが、エアコン無しだと暑くて眠れないのだ。汗がダラダラと溢れてくる。
首周りとふくらはぎの裏に大量のあせもまで出てきた。これはまずい……
とりあえず近所のドラッグストアで制汗剤スプレーを買って体にまぶしてから眠るようにしてみるとだいぶマシになった。が、汗の問題は解決しても温度の問題のほうは何も解決していない。
まさか暑いというのがこれほどまでに過酷だとはエアコンが壊れるまで想像もしていなかった。
エアコンがないと眠れない。眠れるのは室温がいい具合になる4~5時ぐらいになる。そうなると仕事にでかけるまでの時間を差し引いて数時間しか眠れないので疲れも取れない。
さらにエアコンをつけずに眠った後の寝起きは地獄だ。起きたて数十分は脳が煮だっている感じがして数十分は何も行動できなくなる。水分不足なのか、ふくらはぎやお腹の筋肉までつってきた。かなりヤバイ感じであった。
「夏に、ころされる……」
寝起き、ゴミに溢れた狭いアパートの一室で俺はひとしれず呟いた。
そこで俺は考えた。エアコンの修理の日まで、仕事終わりにネットカフェに立ち寄ってそのまま宿泊することにしてみた。
からあげをパックに詰め込むだけの仕事を終えると、その足で近くのスーパーに立ち寄って発泡酒とチューハイを買い、飲食物持ち込み可のネットカフェにチェックインする。もちろん選ぶのはフラット席だ。
このネカフェはナイトパック9時間で1800円と良心的でさらにシャワー料金が20分まで無料なので最高なのだ。
俺はシャワーを浴びて空調の効いた快適なフラットシートで無料の映画を見ながら発泡酒を飲んで最高のひと時を過ごした。
そんな生活を続けていると一週間ほどでお金がカツカツになってきた。
「ふっざけんなよ!」
俺はペイペイの残高を確認して声を荒げて叫んだ。が、俺もいい歳をした大人なので深呼吸をして心を落ち着け、自分を窘めた。
「ネカフェに泊るのはもうよそう……」
ということで今は暑さに耐えながらこの文を書いている。
業者さん、どうか俺の部屋のエアコンを一刻も早く直してください!
8/10/2024, 1:54:57 PM