百合

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ひとひら

桜が散る季節になってきた。
風が吹くと一斉に散っていくから、死に急いでいるように見える。
桜に隠れて咲いていた椿も花を落とす季節になってきた。
ポトリと落ちていくから、昔縁起が悪いとされていたのも納得する。
そう思うと外に咲く花は綺麗に一枚だけ落ちることがない。
でも豪快に散っていく花はなんとなく風情を感じさせる。
そんなことを考えながらテーブルの上に飾られた花を見た。夜にしか会えない彼が誕生日にくれた花。
私たちの関係を通して見るこの花は桜や椿のように風情なんてものは感じられない。むしろ汚くさえ見える。

…あぁ、また落ちた。
なんの罪もないひとひらが。

4/13/2025, 2:17:23 PM