霜月 朔(創作)

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雲り



朝は、雲一つない青空が、
何処までも広がっていたのに。

気が付けば、
少しだけ灰色を帯びた
大きな雲が、
空を静かに埋め尽くしていた。

雲が太陽を覆い隠すと、
ほんの少しだけ、
楽になれる気がする。
こんな俺には、太陽は、
ただ、眩し過ぎるから。

曇り空の下を、歩く。
俺は、その他大勢の一人。
爽やかに輝く青空より、
鈍色の雲が、きっと似合ってる。

君への叶わぬ恋に、
雁字搦めになって、
臆病な遠吠えさえできない俺を、
鼠色の雲が、
せめて、この冷たい街から、
包み隠してはくれないかと、
叶わぬ幻想に縋ってるんだ。

湿気を纏った風が、
重い鎖のように絡みつく。
まるで、胸に残る、
後悔そのものみたいに。
そして、ジワリジワリと、
俺の首を絞めていくんだ。

いっそ、雨になればいい。
雨に濡れてしまえば、
頬に流れる未練の涙を、
雨粒だと、自分に、
誤魔化せる気がするから。

太陽がその輝きを、
雲の向こうに隠した空に、
俺はそっと願いを掛ける。
君の空は、いつも、
青く澄んでますように。

でも。
俺の恋模様は、
ずっとずっと、雲り。
そして、時々、雨。

……それで、いいんだ。

3/23/2025, 12:53:01 PM