「初恋の日」
小5の始業式
隣に座った彼は、運動も勉強もできるクラスの人気者タイプだった。
私には釣り合わないな。
と思いつつ、時折見せる少し憂いを帯びた表情が気になっていた。
みんなとワイワイ騒いでいる時はすごく楽しそうにしてるのに、次の瞬間寂しそうな顔をするのはなんでだろう?
毎日彼を目で追いながら観察していたが、直接聞く勇気は当然持ち合わせていなく。
知りたいこと、聞きたいことはたくさんあったのに、ろくに話せないまま、私たちは小学校を卒業した。
別々の中学校に進学した私たち。
何の接点もなく、彼の事もほぼ忘れてしまった頃
近所の本屋さんでバッタリ出会った。
「久しぶりだね、元気?」
声をかけてくれたことにびっくりした。優しい人なんだと、改めて思った。
ぎこちない会話を交わしたあと別れたが、その時も彼は少し寂しそうな顔をしていた。
思えば私は、ずっと彼が好きだった。
もう偶然会うチャンスはないけど
あの時の疑問を解決する術もないけど
今は寂しい顔してないかな?と思いを巡らせてみる。だいぶ昔の初恋の断片。
5/7/2024, 3:16:01 PM