【神様へ】
私が世界で一番好きな人は、いつも何処かで誰かのためにギターを弾いたり歌を歌ったりしている人。そしてサービス精神が旺盛で、ついついトークが長くなりがちな人。
私が14歳の誕生日を迎えるちょっと前、
たまたま部屋でFMラジオが流れていた。
「僕らの新曲です。聴いてください」
その声に耳を傾けると、続いて流れたその「新曲」に心奪われてしまった。透きとおるようなサウンドと伸びやかな歌声。この人たちの音楽をもっと聴きたいという衝動に駆られ、翌日には手に入れたアルバムをテープにダビングして擦り切れるほど聴いていた。
ライブバンドと評される彼らのライブを初めて観たのは、高校生になってからだった。それまで、登下校のときや自室でず〜っと聴いていた曲が目の前で奏でられているのは何だか不思議な感じがした。
何より不思議なら感覚に陥ったのは、ステージ上から私たち観客に向けたこの言葉を聞いたときだった。
「どうもありがとう」
特別な言葉じゃない。特別なシチュエーションでもない。他のライブでも当たり前のようにある光景。でも、このときの私にはなぜかとても特別な響きに感じられた。ありがとうという言葉が心の奥まで真っ直ぐ届いて、内側でじんわりと溶け出していくような、そんな感覚だった。そしてその感覚は、彼らのライブを観るたびに必ずおとずれた。
どうしてだろう?
どうしてあの「ありがとう」だけ特別なんだろう?
そんな疑問を抱いたまま、気がつけば干支2周りくらいしたころ、ふとこんなことを思った。
「言葉もシチュエーションも特別でないのなら、彼の存在そのものが私にとって特別なのではないか」と。
すると、驚くほど気持ちが楽になった。
これが正解かどうかは定かではないが、
少なくとも私にとっては大切な気づきだった。
神様、私にとって特別な存在であるこの人と、
10代最初の頃に出会わせてくれてありがとう。
もしも20代、30代になって出会ったとしたら、
この想いには未だ至っていないと思うから。
私が世界で一番恋慕うあの人がこれからも変わらず、
いつも何処かで誰かのためにギター弾いたり歌ったり長々喋ったりで3時間越えが通常運転のライブを続けられますように。
そして、彼と彼が大切に想う人たちが
みんな笑顔で幸せでありますように。
4/14/2023, 3:20:43 PM