七篠楓

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海沿い、寂れた商店街の隅っこにあるベンチに二人で腰を降ろす。

薄暮の空に烏が鳴く声、暑さで溶けていく氷菓。
言葉よりも重くその場の雰囲気が自分の感情を語った。
君も同じように感じていたかは分からないけど、そうならいいなと思いながら手に垂れた水滴を拭う。

何も不満など無かったはずの今が、酷く嫌になった。
氷菓をすぐに食べ終えた君は、まだ席を立とうとはしないでいる。
遠くの夕陽を眺めるその横顔を、私は目に焼き付けていた。

その顔を照らす陽が落ちてしまうまで、ずっと。

ーずっと隣でー

3/13/2023, 12:32:05 PM