霜月 朔(創作)

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哀愁を誘う


街が、山が、森が。
秋の燃えるような赤から、
冬の静かな茶へと、
静かにその姿を変えていく。

冷たさを増す風が、
木々の間を鋭く吹き抜ける。

番を失ったのだろうか。
一羽のカササギが、
淋しげに枝に留まり、
遠い空を見詰めている。

その孤独な姿に、
独りきりなのは、
私だけではないのだと、
哀愁を誘う景色に、
ふと、安堵する自分がいる。

繋いでいた手を振り解き、
自ら殻に閉じ籠もったのも、私。
再び差し伸べられた手に、
背を向けたのも、私。

吹き荒ぶ秋風の中、
私の手は冷たく、空虚だ。
だが、それは、
私自身が選んだ道だ。

空っぽの手で、
拳を握り締める。

彼の幸せを祈りながら、
彼とは、逆向きの未来を見据え、
私は独り、歩き出す。

11/4/2024, 6:09:20 PM