大変なる後づけではあるが、刹那は0.013秒くらいに当たるらしい。
小説家に“刹那”を多用する者が居た。確かに使い勝手のいい言葉で、語感も羅列も類義語である瞬時、寸陰とは一線を画す(須臾とは僅差だろうが)。
そんな彼が冒頭の事実を知った。
「0.013秒……」
小説家は手広くジャンルをつまんでいた。しかし、そのどの小説にも刹那はあった。
彼と目が合う刹那、建物が崩落する刹那、静寂の刹那……。
全て0.013秒で起こっていたことであったのだ。
たった1刹那で恋に落ちられるとは到底思えない。動体視力が良すぎるのだ。か細いヒロインが持って良いキャラ付けではない。
建物の崩壊が1刹那で行われるときは珍獣か何かが上から懸命に全体重をかけるしか無いだろう。それでも1刹那で完了するか怪しい。しかも総じて怪獣小説になってしまう。
1刹那の静寂を静寂と捉えるのは心配性の域を超えた神経の狂い方である。
しかし小説家は未だに刹那を使う。
彼の理論では体感の「話なんです。恋に落ちる瞬間は実際刹那的でもあるし、ある人にとっては劫でもある。建物の崩壊という衝撃はきっと刹那的に脳裏に焼き付き、センセーショナルな短編のような忘れられない物語になる。刹那の静寂は当人の願望の表れでもあるでしょうしね」
言い訳がましい彼の人気は初出版から落ち込み続けた。彼の理論を通すならば、世間からの彼の印象は刹那的人気であった人というわけである。
【刹那】
テスト頑張りたいので投稿の頻度か質が落ちます。てか現に落ちてます。
刹那は右手が疼いていた頃によく使っていたのが恥ずかしくてあんまり使えません。
4/28/2024, 1:17:28 PM