『軌跡』
「ここも...」
獣道を進むと苔むした勇者の像をまた見つけた。
ただ手入れのされていない様を見る限りここら辺の人は
勇者のことをもうなんとも思っていないのだろう。
かつてこの世界を守った勇者。
勇者は自分の命が尽きるまでこの世界を旅して周り、
自分の像を作ることで平和の象徴にも
魔族の魔除けにもなると考えていた。
そんな昔話から数百年。
人々は勇者の有難みを忘れているように思えた。
勇者の像が手入れされていない。
つまり勇者が崇められていない...
なんて姑息な魔族が来てしまったら...?
もしものもしものために少し前から
勇者の像を手入れする旅を始めた。
そう、勇者の像を掃除しみんなを守るため。
...けど少しは勇者が辿った道のりを旅するワクワクも
ちょっとあるのは内緒だ。
語り部シルヴァ
4/30/2025, 12:02:18 PM