うどん巫女

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世界に一つだけ(2023.9.9)

わたしが、あなたが、どんなに頑張ったとしても、代わりはいます、世界は回ります、変わらないことも多いです。
しかし、しかしです。
私自身も、あなた自身も、世界という集合体を形づくる一欠片でありますゆえ、あなたが欠けるということは、世界が欠けるということ。
少なくとも、わたしの世界にとって、あなたは不可欠なのです。不可欠な、たった一つの一欠片なのです。
それをどうか、忘れないでほしい。

鳥のように(2023.8.21)

「私が両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のやうに、地面を速くは走れない。」

空を見上げて、ふとそう呟いてみる。いつだったか、国語の授業で金子みすゞの詩を暗誦させられたことがあり、空を飛ぶ鳥を見つめているうちにふうっと思い出したのだ。確か題名は「私と小鳥と鈴と」。なんだか可愛らしい感じだな、なんて思いながら読んでいたのを覚えている。まぁようするに、「みんなちがってみんないい」という詩なのであるけれど、なんともおめでたい思考だな、と毒づきたくなる。自分にできない何かをできる他人を羨みつつも、自分にできることを誇る。それができる人は、きっとこの詩に素直に感動できるのだろう。では、何もできない人は、私は、どうしたらいいのか?私にできないことをできる他人に、私にさえできることができないわけがない。他人を羨み、妬み、自己嫌悪する。その繰り返しだ。
私は鳥のようにも、「私」のようにもなれない。


裏返し(2023.8.22)

これは割とどうでもいい話なんですけど。
「厳しさは愛情の裏返し」、みたいな言葉ってあるじゃないですか。
つまりは、愛情というものは表面と裏面が存在するような、薄っぺらい紙みたいなものなんですよね。
本当にくだらない話です。


海へ(2023.8.23)

「なんか、海行きたい」
夏休みも終わりがけの頃、ふとそう思い立った。
夏といえば海。そんな安直な考えのもと、何としてでも海に行こうと決意する。
それではどうやって行こうかと、近くの浜にどう行くか調べてみた。生来山育ちの私の家のすぐ近くには海などなく、細々と走る電車に揺られて30分、そこから1時間ほど歩かなければ浜には着かない。電車だけで行ける浜もあるにはあるが、そちらは電車賃の出費がなかなかに痛かった。
よし、歩くか。またも安易に決意して、最寄駅へ自転車を走らせた。

30分後、浜の最寄駅に着く。夏の暑い日、しかも家を出たのが昼頃だったので、ちょうど気温の最も高い時間帯だ。当然のことながら、酷暑の道路を歩く人影はない。
覚悟を決めて歩き始めた。この辺りの地域はほとんど訪れたことがなく、見るものが全て目新しくて楽しい。……そんなことを言っていられたのは最初のうちだけだった。
暑い。とにかく暑い。そして、思いの外徒歩1時間は遠すぎる。延々と続く田んぼと工場の間のまっすぐな道を歩き続けてはや30分、もう心が折れそうだった。

やっと、やっと海が見えてきた。水面は日の光できらきらと輝き、海鳥が涼しげに飛び交っている。浜までは、あともう少しだ。

堤防をひぃひぃ言いながらなんとか乗り越えて、浜に降り立つ。あんなに切望していた浜は、案外漂流物で雑多だった。しかし、寄せては返す波をじっと見つめていると、ここまできた苦労も水に溶けていくようだった。

帰りの1時間をまた歩いた私から感想を言うとしたら、言いたいことは一つだけ。
自動車は偉大だ。

9/10/2023, 2:44:40 AM