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お題『嵐が来ようとも』


 何があっても君を守る。
 幼い日にそう誓った。思えば一目惚れだったかもしれない。
 その日から彼女は、周りから避けられていた僕の唯一の友達になった。
 彼女との日々は楽しかった。
 彼女と一緒にいることで余計に疎まれても構わなかった。彼女がいじめられるたび、僕が守っていた。彼女が弱るたび、僕が助けていた。
 やがて僕は大人になり、また彼女も成長した。
「拠点を移すことになった。ついてきてくれる?」
 そう言えば彼女は頷いてくれた。そうして僕は彼女を伴って引っ越した。
 新しい土地は少し厳しい環境だったけれど、なんとか一緒に根を張っていった。
 それがもう30年は昔のことだ。
【――台風○○号が迫っています。皆様、家の外に出ないように――】
 警告を繰り返すテレビの音を背後に、僕は家を出た。

『――伯父さん、昔からなんというか……自然のものが見えたらしいの。精霊というか、あやかしというか……ええそう、伯父さんの言う「彼女」はそうよ。それであの歳まで結婚もしてなくて……目を離した隙に、行ってしまったのね、約束を果たしに……』
『でもねえ! 私も今回はじめてちゃんとその「彼女」に会わせていただいたけど、あんな大樹に守りは要らないわよお! そりゃあ昔は若くて細くて小さな木だったのでしょうけどね。それに嵐って言ったって、例年通り程度のものよ。これまでだって大丈夫だったそうだし、最近は無茶もしなかったのに、ちょっとボケちゃったのかしらね』
『ええ、逆に……ふふ、逆にあの大樹に守られちゃって。朝になって探しに行ったら木の陰で爆睡してたわよ! もう!』
『ええ、正直ちょっと……気持ち悪いでしょう? 気持ち悪い子供だったと思うわよ。でもそれもここまで貫かれたんじゃあねえ……勝手にしてとも思うわよ。心配させたのは怒ってるけど』
『今日も伯父さんは「彼女」に会いに行ってるわ。まったくもう、ご馳走さま!』

7/29/2023, 11:34:05 AM