ももりん

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雫が溢れた。
ひとりで、電車に乗り込む。どれだけ俺の頬が濡れようと、俺の目が赤く腫れようと、喧騒はそんなことは気に留めもしない。人混みの中で、俺は一人切りだった。
「ユキト?その、大丈夫か?」
顔を上げて、後悔した。気が付かないでほしかった。いや、気がついても、気がつかないふりをしてほしかった。
「レン、大丈夫だよ。目にゴミが入っただけだから」
自分でも言い訳がましい、とは思う。俺は思い切り目をこすった。
「そっか」
レンはそれしか言わなかった。

しばらくの、気まずい沈黙があった。電車の走る音だけが耳に響く。周りの喧騒なんて、もはや気にならなかった。
ただ、涙というのは、そのうち収まるもので。
「レン、今日はこのまま帰るの?」
「うん。部活、オフでしょ。てか、同じ部活だし」
「そりゃそうか」
ふっと笑いが溢れた。レンも隣で笑う。
電車に揺られて一時間ほど。車両には、俺たちしか居なくなっていた。窓の外には、緑色しか見えない。車掌さんが、最寄り駅の名を呼んだ。俺たちは、電車を降りる。

ド田舎の、誰もいない野ざらしの駅のホーム。いつもの景色。
屋根も何もない、剥き出しの鉄骨のような階段を、二人で登った。いつもそこにある青空が、今はやけに眩しかった。

階段の一番上に着いた。
ふと、ポツリと何かが顔にあたった。
「雨?」
「え?でも晴れて…」
レンが言いかけたその時、ザーと雨が降ってきた。
「うわっ」
無数の雫が、青い空から落ちてくる。
その光景が、どこかスローモーションに見えた。
「あはは、ユキト。お前、びしょ濡れ」
レンが俺を指して笑う。
「お前もだろ」
俺は、足元の水たまりの水をレンに足でかけた。
「高校生にもなって、子どもだな」
そう言いつつ、レンも手すりの水をこちらにかけて、負けじと応戦する。
「うるさい。高校生は子どもだろ」
二人で全身びしょ濡れになりながら帰った。

4/21/2026, 11:34:46 AM