昔、隣に住んでた女の子がいた。
赤ちゃんの頃から一緒にいたその女の子は、少し泣き虫な一面があった。
突然現れた虫に驚いて涙を溜めたり、食べようとしていたアイスクリームがぽろっと零れ落ちしまって涙を溜めたりと、何かある度に泣き顔を見せていた。
「うぅ……っ。」
「ほら、泣くなよ。」
涙を零す姿を見る度に俺はその涙を手で拭ってきた。
何かあったら俺が側にいて、何かなくても側にいて……
そうやって俺達は同じ時間を過ごしてきた。
『一緒にいるのが当たり前。』
『大人になってもずっと一緒にいる。』
そんな風に思っていた16歳の夏、彼女は驚く言葉を俺に言ったのだ。
「あのね…?その……引っ越し…するんだって…私。」
「……は?」
突然のお別れ宣言だった。
両親の仕事の都合で遠くの町に行くことになったそうだ。
「そっ……か……。」
言葉を失った俺は何も言えなかった。
今までずっと一緒にいた、半身とも呼べるくらいの女の子が遠くに行ってしまう事実が受け入れられなかったのだ。
(……いや、俺がこんなふうになるくらいならこいつは……)
今までにないくらい涙を零すんじゃないかと気付き、俺は彼女を見た。
すると彼女は俺に笑顔を向けていたのだ。
「ーーーっ。」
「あのね…?もう泣かないよ?泣かないから……大人になったら私を迎えに来て?ずっと待ってるから……」
そう言ったのだ。
いつもの彼女なら絶対に泣くと思ったのに、まさかの言葉。
俺は自分の目に涙が溜まっていくのを感じていた。
「…あぁ、必ず迎えに行く。待ってろ。」
そう伝えた5年後の今日、俺は彼女が住んでる町に向かってる。
手には3本の薔薇を持って……。
くるくる
3/17/2024, 1:57:50 PM