貴方は静かに手を離す。
それがきっと最善だと言うように。無慈悲に、不条理に、無責任に私の手を離す。
誰かが誰かを想って行動する。時にそれが、誰かにとっての傷跡になる事を、貴方は理解しえない。今までも。そして、これからも。
もしも、この結末を知っていれば、私は貴方の手を取る事は無かった。ただ独りで望むには余りにも惨めな感情のまま、自由な世界で微睡んでいたかった。
けれどそれを許してはくれない貴方が、希望の世界を私に見せた挙句、突き放して曖昧に笑うから。
私は、目を逸らせずに。溺れそうな夜の静けさの中で、ただ溢れようとする嗚咽を噛み締める。
苦しいと体が軋む。――それでも折れてはいけないと、貴方は私の手を離す。
助けて欲しいと詰まる息に喘ぐ。――それでも沈んではいけないと、貴方は私の手を離す。
かみさま。
ねぇ、かみさま。
お願いだから、私から貴方(死)を奪わないで。
4/19/2024, 4:42:32 PM