御蔭

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「そう、だよな。いや、良いんだ……お前が幸せなら、それで」

 愛する彼女の元に戻ったが、一足遅かったらしい。新たに心を寄せるだけの相手が見つかったらしい。
 彼はそれを恨まなかった。ずっと何処にいるかもわからない。周りは死んだものだから諦めろと囃していた。そんな環境に置かれれば気がおかしくなるのも当然だろう。諦めずに奮闘していたことも知っていたが、心が折れてしまったらしい。壊れた心は二度と元には戻らない。だからこそ、今度は自らの意思で姿をくらまそうとした。

「どうして……そんな、俺はまた、お前の前から……」

 本当は辛かった。揺らぐ気持ちは押し戻されたのだと。

「……ごめんな、今度はもう、離してなんかやれないから」


(※wipかつメモ)

『三度の離別の果てに結ぶ鎖は』

お題
もう二度と

3/24/2025, 2:59:40 PM