“冬は一緒に”
解せない。虫唾が走る。気持ちの悪い。この落魄れが。
彼は、私以外の女子生徒に「苗字+ちゃん」と呼んだ。
私があの教師を好きになっていたのは、他の教師とは違ってしっかりと生徒と教師の間に境目があったからだ。それが何?いまは他の女生徒に馴れ馴れしく話しかけているじゃないか。私は彼をあんな人だと思っていなかった。どうしても納得できない。私のこの醜悪な想像が、誰になんと言われようとも、今の彼に納得はできない。
あの女子生徒より遥かに賢い私が、あの女子生徒より遥かに彼の授業に耳を澄まし、単語の溢れる一つ一つを拾い集めたこの私が。学校生活の全てに、彼を想い深めた私が、彼にはそう呼ばれず、ぽっと出の女に馴れ馴れしく呼んでみせた彼が腹立だしくてしょうがない。許せない
女子生徒は悪くない。それはわかっている。あの男性教師が全て悪い。教師としてあるまじき態度をとったあの男が、全て悪い。ただ、私は私のことも許せなかった。ただ教師という職業に就いただけの男に期待をし、少しでも違う素振りを見せれば憎悪に塗れた汚い考えを生み出す。そう、私だった。一番汚いのはずっと私。純粋に愛を捧いでいた彼に、いつしか焦燥に駆られ憎悪までも抱き出した。想像上の彼に、泥を塗ってしまった。
解せない。虫唾が走る。気持ちの悪い。この落魄れが。
どうか私を、あの雪のように溶かしてくれ。そして私と“冬は一緒に”、消えさせてくれないか。
12/18/2024, 11:38:09 AM