『桜散る』
「桜散る頃に、また会いましょう」
交わした約束は果たされなかった。
約束をした桜の木の下で僕は1人きり、貴方の事を考えていた。
厳密には約束じゃない。
ただ僕が1人でそう言っただけで、貴方は最後まで返事をしてくれなかったから。
だから果たされなくても、貴方が悪い訳じゃない。
どちらかと言うと約束してくれないだろうとわかりつつも、そう言った僕が悪いのだ。
足元にある桜色の絨毯を汚す土色、それがきっと僕だ。
貴方はきっと持たなくて良い罪悪感を感じているだろう。
それでも卑怯者の僕は、それを喜んでしまう。
貴方がどんな感情であれ、僕の事を考えてくれる。
それだけで僕の胸は喜びに震えてしまう。
「あぁ、貴方に会いたいな」
会えなくても良い。一目見られたら嬉しい。
そう思って貴方の家へと向かう。
貴方が居たら、きっと驚くだろう。
もしかしたら、泣いてしまうかもしれない。
「楽しみだな」
わざと桜の花びらを踏みつけながら歩く。
大丈夫だよ。
泣いて、怯える貴方も素敵だから。
僕に無断で何度引越したって、何度だって探して見つけ出すよ。
貴方が好きだから。
4/17/2024, 1:52:28 PM