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「自転車に乗って」

どこまでも行けそうな気がする。レンタサイクルを借りて湖を一周する。サークル仲間と訪れた河口湖。十人のメンバーのうち女子は二人。先輩も含めて男子は8人。現部員で女子は私たちだけ。だからとても待遇が良い。

「気持ちいいねー」

二人でのんびり景色を楽しむ。男子たちはとっくに進んでしまった。時折、部長が心配して待っていてくれる。やさしい人だ。

「二人とも大丈夫?」

「はい。とっても楽しいです!」

サークルのなかで誰が素敵?、〇〇先輩の彼女見ちゃったとか、他愛もないおしゃべりをしながら、自分たちのペースで進んで行く。

「もうちょっとスピード出しても平気じゃない?」と提案すると「行ける!」との返事。それから二人で呼吸を合わせながら進むと、二年生の先輩が二人休んでいる。

「お先に〜」と追い越した。まだまだ行ける。自転車に乗るのはいつ以来だろう。高三のとき海に行くのに乗ったのが最後かな。友だちは今でも駅まで毎朝乗っているそうで、全然平気な顔をしている。田舎育ちの体力を侮るな。絶対に負けるもんか。

変な対抗心も手伝って、二人は順調に男子たちを追い越していく。始めに飛ばし過ぎたのか、男子たちは道端に座り込んで肩で息をしている。

ゴールが近づくと二人はますますスピードを上げる。対抗心なんてどこかに飛んでいった。ただ純粋に楽しい!青空と湖と富士山が美しい。それを共有できる仲間。

二人で一番にゴールをして棒アイスをかじる。ザクッと音がして中のかき氷の冷たさにキーンとなる。

半分かじったところで二番目がゴール。最後のメンバーがゴールする頃にはとっくに食べ終わっていた。

「二人とも速いね!」

東京育ちのへなちょこどもよ、田舎育ちの体力なめんなよ。

8/15/2024, 6:24:05 AM