あれは入学初日の事だった。
入学式の時、200人余りの新入生の中で一際目立っていた女子がいた。艶やかで綺麗な焦げ茶色の髪。
肩ぐらいまでのボブヘアー。横に長くとても綺麗な瞳。妖艶な美少女である君を見た瞬間、僕はこれまで感じたことの無い変な感情に襲われた。胸がキュッと苦しくなり、鼓動が早くなる。入学式なんて集中出来るわけもなく、君に釘付けになっていた。
入学式が終わり、各クラスで担任の紹介、課題の提出などがあり、そこから昼休みの時間になった。
母の弁当を片手にどこか景色がいい所で食べようかと教室を後にした時、三階の1年教室の廊下から上へ上がる階段へ誰か上がっていくのが見えた。
「あの、階段って確か屋上行きだよね。」
気になった僕は後をついて行ってみることに。
階段の方まで行き上を見上げると、入学式の彼女が見えた。
「あ……あの人。」
どうやらこの校舎は屋上利用OKらしい。
彼女のことがどうしても気になった僕は、階段を駆け上がる。
「話したい……彼女と話を、してみたい。」
はやる気持ちを胸に、階段を上がりきった僕は屋上への扉をグッと開けた。
そこには彼女が屋上の手すりを掴み、景色を眺めている姿が見えた。
微風邪に靡いている綺麗な髪に、僕はまたも夢中になり、目が離せなかった。
スっとした鼻筋、艶のある唇。
「横顔も綺麗だなぁ、」
僕は完全に彼女に見惚れていた。
ついに決意を決めた僕は、彼女と話をするため、ゆっくり歩いて彼女に近づいていった。
ゆっくり、ゆっくりと、近づく度に鼓動が早くなる。手が震える。
━━1歩1歩ゆっくりだった僕の足は、一気に速さを増した。気づいたら僕は全速力で走っていた。
でも、それは彼女と早く話したかったからじゃない。
彼女が手すりの向こう側を越え、屋上から飛び出した──
落ちていく
11/23/2024, 1:00:10 PM