いす

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冬になったら、あの日の話をするか。大寒の頃に南国に咲く桜の話をするか。お前と観に行ったあの桜の話をするか。花びらを分けて散らさず、ただ一緒になって頸ごとおちるあの桜の話をするか。
散り散りにならずに済んでいる。
散り散りになったらなったでいいのでは。
それでもまだ隣だ。まだ隣にある。
いまの俺らがあの桜の頸なのか、いまから分たれて散るのか、賭けてみるか?成立などしない賭けか?お前が握り返すその手の温度が答えだと、お前は知りもしないで笑う。だから俺も笑い返す。愛じゃない。親友じゃない。二人でひとつでもない。名前をつけられなくていいしつけられないと名付けて片付けてもいい。己の名前をつけられずに倦んでいた俺が、己の名前をつけざるを得ず倦んできたお前が。ただ相応しく、ただ互いに相応しくここに在る。

11/17/2023, 11:29:01 AM