#隠された真実
(長いですが最後まで見ていただけると嬉しいです!)
私、三条 美紀は、よく知られている三条グループの令嬢だ。今年で高校2年生になった。
私は、中学3年生のときに事故に遭い、それまでの記憶がすっぽりと抜け落ちている。
その記憶を思い出そうとすればするほど、私の頭には「?」の文字が広がっていく。
でも案外、記憶がなくても困ることはなかった。
記憶がない、と言っても失ったのは小学6年生から、事故に遭った中学3年生までの記憶だからだ。
それに何より、令嬢である私には専属のお世話係がついている。
彼の名前は榊 竜也(さかき りゅうや)。
竜也のお陰で、私は、記憶を失ってもどうにか元気でいられている。
ただ、一つ気になることがある。
それは、中学1年生の私と、記憶を失ってから出会ったはずの竜也との写真があることだ。
中学1年生の頃の私と竜也は出会っていないはずだ。
なぜなら、竜也は記憶を失った私をサポートするために私の家に来た。
中学1年生の私は、まだ記憶を持っているから、竜也との接触はなかったと思っていた。
だから気になって竜也に訊いても、「さあ、私には分かりません。」とはぐらかす。
記憶を失う前の私は、竜也とどんな関係だったのだろう…。
好奇心が抑えきれなくなって、竜也の部屋に向かう。今日、竜也は出張で家にいないはず。
竜也の勉強机に、何やらノートがあった。表紙には「日記帳」と書いてある。
自分に「だめだ」と言いながらも、ここまできたらもう引けない。
そのノートを手に取り、はじめのページを開いた。そこにはこう書いてあった。
「5月14日 美紀が事故に遭ってから5日たった。記憶を失ったらしい。
ということは、恐らく俺と付き合ったことも忘れたのだろう。
ちょっとでも思い出してほしいからって世話係になるなんて、俺、変態かも。
でも、これからは『美紀』じゃなくて『美紀様』か…。悲しいな。」
それは信じがたいことだった。でも、そう考えると、あの写真にも納得がいく。
―ガチャ
部屋の戸が開いて、
「見てしまいましたか、美紀様。」
声が出なかった。なんと言えば良いかもわからなかった。竜也は続けた。
「私が彼氏だったと知ったら、美紀様を困らせてしまうと思い、ずっと隠しておりました。」
「『美紀』って呼んで。思い出したよ。竜也。このネックレス、竜也がくれてたよね?
ずっと忘れててごめんね。不安にさせたよね。これからも彼氏でいてくれる?」
そう言って、私は付けていたネックレスを竜也に見せる。
その後、竜也は言った。
「もちろんでございま…。いや、もちろんだよ。美紀。大好きだ。」
7/13/2025, 12:01:43 PM