渚雅

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「眩しいだけ」
「今の時期が好きなんだけどなー」

日に向かって歩きながら戯れにそんなことを話す。学び舎は山を越えた向こう,必然的に対面するそれに目を細める横顔。

ガラスに乱反射する光線が万華鏡のように忙しなく目を刺し眩む視界が嫌だと語る。曰く酔いそうだと。


「葉桜の時期がいちばん優しい。これから更に目まぐるしくなる。憂鬱」

暑いし。夏本番がこれからとか信じられない。心底嫌そうに言うそれについては,激しく同意する。この穴が開きそうな暑さの中30分も歩くという行為は耐えようのない苦行。けれど,日が長くなり行動時間が増えるその一点で夏は嫌いではなかった。

隣を歩く人物は 日照時間が伸びた分その熱から逃げるように早く行動し,あがりきったら冷所を求め校舎に閉じこもり,日が沈みそうになってからまた行動し始めるのだから。ようはそれだけ長く一緒に居られる。

だから,いつも天気予報を眺め早朝日が差し込むその温もりを楽しみに目を塞ぐ。雨は君との逢瀬を邪魔する。雨音のメロディーを楽しむ君には悪いけれど,梅雨なんて終われと願うしてるてる坊主は密かに常備している。


「なら集合時間早くするか」

不満げに縦に動いた顔を見てほくそ笑む。やっぱりこれからの時期が好きだ。なんて言えるわけもないが。


テーマ : «朝日のぬくもり»

6/9/2023, 2:08:28 PM