『大好きな君に』
墓参りには年に6回ほど行っていた。正月、春分、盆、秋分、君の命日、君の誕生日。今日はそのどれでもない日だけれど、報告したいことがあった。
君の命を奪った通り魔は有罪判決となり懲役刑が確定した。けれど模範囚になったとやらで刑期は短くなり、判決よりも早く社会に帰ってきた。それを許すことができなかった私は興信所などを頼って居場所を突き止め、何も言わずに後ろから刺した。事切れたのを確認してから自分で警察へ出向き、刑務所で服役した。
「これで思い残すことなくそちらへ行けます」
真新しい線香と真新しいろうそくに火をつけて手を合わせる。墓石は何も語らない。
生きる気力はすでに失われてしまった。立ち上がってからどこへ行こうかと考える。海がいいだろうか。山がいいだろうか。
3/5/2024, 3:18:41 AM