エムジリ

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 セーターといえば冬だろう。半年ぶりに衣装ケースを開けて、太い毛糸で編み込まれたその姿を見るたびに「寒い季節がやってきた」と思う。
 サマーセーターなんて物もあるが、あれは好みではない。袖が短かろうが生地が薄かろうが、外で着るには暑すぎるし、冷房の効いた室内では露出した腕が冷えるし、活躍の場がいまいち分からないのだ。

 そう言いながら私は、もこもこと着ぶくれする暖かなオーバーサイズのセーターよりも、体にぴったりと張りつくタイトなタートルネックセーターのほうが断然好きである。男女かまわず、美しいスタイルを持つ者が着ていると、ついチラリと盗み見てしまう。決して素肌をさらそうとはしないのに、肉体のラインをことごとく主張してくる様がなんとも淫靡な雰囲気を醸しており、その矛盾に惹かれるのだ。

 無論、私もタイトセーターを着用する。先の矛盾が人目を引くことを承知で、あまつさえ期待すらして。
 例えるなら、誰にも知られてはならない秘密を抱えながら、できるだけ強引に暴かれたいと渇望しているような烈しい矛盾を、優しい毛糸の内側に隠して人ごみを歩いている。

 だから矛盾に満ち満ちた冬の日には、私はときどき恋と呼ぶにはふさわしくない、投げやりな愛を結ぶ。一年と言わず半年も持たない、超期間限定の、冬季限定のよこしまな感情だけで成り立っている愛を、私は結んでいる。


▼セーター

11/25/2024, 2:37:24 AM