ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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視線の先には

「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、あれはスーパーマンだ!」という牧歌的かつ20世紀的なお馴染みの台詞を言うことはできなかった。「あれはなんだ!」との問いに誰も答えられなかった。人々はみな空を見上げた。その視線の先にある暗い物体が、どんな形をしているか語れる人はいなかった。視線を集めるたびその暗いものは成長した。人々は次第に空を見上げなくなり、疑心暗鬼な心をそのまま同朋にぶつけ始めた。誰かが誰かを傷つけるたび空の暗いものは大きくなる。やがて地に落ちてくるのだろう。そのとき私たちは私たちが作り上げたものと出会うのだ。

7/19/2024, 11:17:50 AM