お題/優しくしないで
貴女はそっと私の頬に触れるのです。
「ほら、泣かないで、綺麗な顔が台無しよ?」
私の涙で濡れた指先が、煌めいて見えました。ああ、ああ。優しい貴女、美しい貴女、貴女のすべて、すべて、私には目が潰れてしまいそうなほど眩しいのです。
私は、あの娘を虐げました。私は、怖かったのです。私はあの娘を汚らわしいと思いました。
貴女はあの娘に手を差し伸べます。
その時の私の感情の、なんと卑しいことか。それなのに、貴女は、私にも優しく、触れてくれる。
ごめんなさい。ごめんなさい。汚らわしいのは私です。穢れているのは、卑しいのは、私のほうなのです。
貴女に優しくしてもらう資格など、私にはないのです。
けれど貴女に嫌われたくないから、私はそれを、言い出せずにいるのです。
お願いだから、もう私に優しくしないで。
私は、貴女と一緒に歩むには、相応しくないのです。
5/3/2023, 6:05:53 AM