花凪多 .

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#51【ぬるい炭酸と無口な君】
※同性愛要素を含みます

「なんか奢るわ。何がいい?」
先ほど寝過ごしてしまった数学のノートを見せてもらった代わりに、俺が自販機で奢ることに。
「…別に、なんでも。」
普段から無口な君は、そんなことを言う。
なんでもが一番難しいのに。
「なんでも…とかムズいんだけど。」
「三ツ矢サイダー…とか、」
君は小さく呟く。
「え、そんなん飲むんだ…」
少し驚きながらも、サイダーのボタンを押した。
「ん、これ。」
「ありがと、」

帰りの昇降口、君を見つけた。
君の手には昼のサイダー。三分の二ぐらいが飲み干されていて、まだ残っている。
どこか嬉しそうな表情だった。
「まだ全部飲んでねーの?」
「…うん。なんかもったいなくて笑」
笑った。あの無口な君が。
「俺、なんか花川といると…安心する。」
そんなこと言われるなんて思っていなかったから、嬉しくて嬉しくて。
「そんなこと言われるの初めて。ありがと。」
俺はそう返して、さりげなく赤い顔を隠した。

8/3/2025, 4:33:34 PM