心が躍るように高鳴った。
その揺らめく碧い瞳。
楽しそうに舞う黒い髪と、覗くピアスで穴の空いた耳。
日々がスローモーションに見えた。
平日の親友は超真面目。新雪のように白い肌には授業のときだけ赤い眼鏡をかける。本の読み過ぎで少し目が悪い。
『ワタシは完璧な美少女だもんっ』
初めて会ったときから振り回されてきた。
『ねっ、髪切ったの!』
他の友達と話してても、あの子ほどおどけてて可愛い人はいないよねと笑うほどだった。
私のカメラには全ての記憶が眠っている。
『嫌よ…ねぇ、まだ行かないで…もしそれが失敗したらいなくなっちゃうんでしょ?』
狼のようにふわふわな黒髪は雨で濡れ、悲しそうに枝垂れていた。
高校三年生の夏。
青い青い春を、ハサミで切るより無惨に、残酷に、眠りが遮った。
けれどすぐ、魂はあの声を追いたどり着いた。
『あはは、十年後に目覚めるなんて、オーロラ姫のちょうど十分の一の時間じゃない!』
抱きしめながらオーロラ姫と言われると、生きている証であるという実感をさせるようにドキドキする。
『ふっふっふ。こっちはいつでも旅行に行く準備できてるんだからリハビリ頑張るんだぞっ』
ふふ、それなら頑張れるために支えてくれるパートナーを作らないとね。
『あら、パートナーならここにいるじゃない!頼ってよ。君のために頑張ってたんだからさ!』
ねぇわざと言わせたんでしょと親友が笑う。
学生の頃も綺麗だったけれど、今の方がもっともっと綺麗だと思うと、時間の流れを目に見えるように感じた。
ねぇ、聞いて。
ありがとう、ずっと話しかけてくれて。
ありがとう、側にいてくれて。
ありがとう、私を愛してくれて。
天のような瞳が瞬いた。
過ぎた日にもっと見れたはずのその瞳には海ができて、きっとそこには想い人がいるのだろう。
「あなたを想うよ。花のような美少女さんへ」
『過ぎた日を想う』
10/6/2023, 11:28:37 AM