作家志望の高校生

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運命が変わる日は、いつも唐突だ。
いい変化も、悪い変化も、平等に、何らかの形で訪れる。
悲しい出来事がいい運命への切符になることもあれば、一時の幸せが後々の大きな後悔を生むことだってある。
そんな定説を、俺の人生はやっぱりなぞるらしい。
普通から外れることのない人生を歩んでいた。
田舎すぎず、都会すぎない普通の街、そこそこの一軒家に住む平凡な両親の下に生まれた。
自分とそこまで変わらない顔、変わらないステータスの妹が一人できて、程々に喧嘩しつつ、兄妹として妥当な距離感で、小さい罪を程々に積みつつ、それでも堅実に、平凡に生きてきた。
俺の座右の銘は「尋常一様」。国語辞典でこれに出会った高校生のある日に決まったのだ。
とまぁ、そのくらい普通に育ってきた。
今俺は、特技のペン回しをしつつ、来週に控えたテストのためにワークを開いて向き合っている。しかし、さっきから一文字も進んでいない。
目の前に座って小首を傾げる謎の幼児を見て、これまでの普通の人生を振り返るくらいには混乱していたからだ。
瞬き一回分の時間前には、確かに俺は部屋で一人だった。
元々勉強も進めずにペン回しをしていたのは事実だが、それでも、人生を振り返るなんて今際の際じみた真似はしていない。
混乱する俺を他所に、幼児は部屋を這い回り、コップの水を倒して俺を叫ばせ、散々振り回しやがった。
そんなのが出会いで、普通だった俺の人生に、普通じゃない奴が突然現れた。
謎の幼児は、どこぞの月の姫のごとく大きくなったし、顔は頗る整っていたし、父も母も妹も、当然のようにそいつの存在を受け入れている。
俺の身長を三日にして抜いたソイツは、今日も満面の笑みで俺の後をついて回っていた。何故か、現れた時と同じように、突然同じ学校の生徒ということになっていたのだ。
「僕と君は運命なんだよ」
なんて、やたらいい、低く甘い声で囁かれた時は鳥肌が立った。
奴は自称天使で、天界で俺を見かけて一目惚れ、そのまま流れで地上へ降りてきて、今に至る、らしい。
意味は分からなかったが、それ以外に納得のしようもないのでとりあえず信じた。
気持ちの悪い奴ではあるが、悪い奴ではない。
奴に出会ってから全ての運命が変えられたような気はするが、それでも相変わらず平々凡々とした人生を送れている。
結局、劇的な出会いをしたとて人生の大枠は変わらない。
奴は俺が学校をサボれば当然のようにサボってついてくるし、俺がペン回しをしていれば無限に褒めてくる。ちょっとうざったいくらいだ。
それでも、俺の人生に奴が組み込まれたことで、平凡だが何かが違う、温かい人生になったような気がした。

テーマ:君と出逢って、

5/6/2026, 8:57:50 AM