つぶて

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バス停に佇む君は、澄ました顔で空を眺めていた。
さあさあと雨が降る中、
私の足音が聞こえたのだろう。
振り返った君は、少し意外そうな表情を浮かべた。
「雨だからバスにしたの」
「あ、一緒」
君は合点がいった様子で目元を緩める。

部活とか、授業のこととか。
そんな他愛のない会話が楽しかった。
穏やかな君は悠然としていて、
隣の席で傘を握りしめる私とは正反対だった。

また明日。学校でね。
うん。

君はひらりと手を振り、私も手を振り返す。
嬉しさと寂しさが混じり合って、
私はわけもなく家路を急いだんだっけ。


目覚ましが鳴る。
身を起こし、窓の外を確認する。

今日も私は、雨を願う。

5/6/2023, 7:03:44 AM